詩誌は、いまー⑪

「濫書堂通信」縁起      佐伯 圭

 

 時は平成19年、今を遡ること10年の昔でございました。上州、伊勢崎に住みたる佐伯某と申す者、ふと思い立ちまして、己が頭に浮かびましたる言の葉や、書物に関わるあれやこれ、旅先で見聞きした珍しき事物、また身辺に生じたよしなし事を、瓦版、読売のようにまとめてみたら面白かろう、と考えました。
 そんなふうに思い立ちましたのは、よき先達があったからでございます。栃木の青木幹枝氏、高崎の金井裕美子氏のお二人が出されていた「青金新聞」。A3版裏表を手書きの文字でびっしり埋め尽くしたその「新聞」は、たいそう読みでもありましたが、と同時に「こういう形なら、自分にも出せるのではないか」と、佐伯某に思わせたのでございます。
 と申しましても、初めから皆々様のお目にかけようと目論んでいた訳ではありません。その頃親しくしていた友人に、「(私設)図書館通信」と見栄をきりまして、瓦版ふうの刷り物を送りつけたのが始まりです。勝手気ままなその書き付けを、その女性は笑って納めてくれたのでしたが、味を占めた佐伯某、自宅のプリンターで印刷し、他の知り合い(主として上州の詩の作者)にも読んでもらおうと始めたのが「濫書堂通信」でした。
 さすがに「図書館通信」では、どこかの図書館の発行物と誤解されそうでしたので、古書店「濫書堂」の店主を名乗りました。決して詐称ではありません。ここではないもう一つの世界で古書店を営む佐伯でございます。
 そうやって始まった「濫書堂通信」ですが、お陰様で号数を重ね、先だって五十号を超すことができました。回を重ねるうちに、いくつかのエッセイがシリーズになり、用紙もカラーになって今日に至っております。
 好き勝手な中身とペースで、書き進めて参りました「濫書堂通信」。暫くは続くと思いますが、皆々様の励ましのお便りが何よりの後押しとなります。今後とも、ご支援の程よろしくお願い申し上げます。

(会報302号「詩誌は、いまー⑪」より)