第30回まほろばポエトリーステージ
 近藤洋太・講演会          新井啓子


 風薫る五月七日、久しぶりに訪れたまほろばは木々の緑が一層濃く深く目に映った。
 「歴程」会員近藤洋太が演題に掲げた『宗左近・辻井喬・栗津則雄』の三名は、詩壇における重鎮であっただけでなく、近藤の詩歴を物語る重要な人物ばかりである。
 それぞれの生い立ち、成長期の境遇が人に多大な影響を及ぼすことは、詩人に限つたことではなく、文学をはじめとする芸術家たちが、出自や幼少の不幸を敏感に受けとめ、文学に昇華していく姿を私たちは幾度も目にしてきた。   

 この三名においてもそれぞれが事情を持つ。戦火に母を奪われた宗が、詩作によって戦争を乗り越えようとしたこと。複雑な家庭環境と父への反発が共産主義への接近に繋がった辻井。恵まれた幼少期を送りながらも二次大戦後の時代への懐疑に拘泥した粟津。三人三様の人生を送りながらも、共通するのは「戦後という時代」である。
 戦後七十年、「戦後詩」というジャンルは遙か遠くのもののように思われる。けれど、1910・20年代に生まれ、長く戦後を生きた三名の生身の姿を振り返ると、それは決して遠いものではなく、私たちに「時代を生きる」宿命と詩作の必然を突きつけてくる。
 そして、80歳を過ぎてなお、旺盛な創作力を持ち続けた詩人達に、あやかりたいと思ったのは近藤と私だけだっただろうか。

(会報297号より)

 


第30回まほろばポエトリーステージ

 近藤洋太講演会「宗左近/辻井喬/粟津則雄」

 

日時 平成28年5月7日(土)午後2時より
場所 現代詩資料館・榛名まはろば
会費 1500円(1ドリンク付き)
定員 5 0名
予約・申し込み
   電話・FAX 0279-55-0665
         メール harunamahoroba@nifty.com



以下は昨年の内容です。


第29回まほろばポエトリーステージ
 野沢啓講演会「いま、この時代に詩を書くということ」に出席して
                                 野口直紀


 五月三日(日曜日)
 初夏。新緑の眩しい季節。
爽やかな風に吹かれて、今日は気軽にのんびりと講演を楽しく聞くつもりでいた。
 ところが野沢氏の講演は難しく、おまけに講演の感想を書かねばならない事になってしまい、気軽に楽しむどころではなくなってしまった。
 私は海外の詩人、作家、思想家、音楽家等々、まつたくわからないのだ。
今回も、ジャツク・デリダ。パウル・ツェラン。フイリツプ・ラクー=ラバルト等々を野沢氏は取上げた。
私にはまったく歯がたたなかった。
 鮎川信夫については長く語った。
後日、こうして改めて鮎川信夫の作品を読んでみると、さすがに素晴らしく感銘した。
詩ばかりか散文も強いものを感じた。
きわめて鋭い。
 「荒地」のリーダー格。
「戦後詩」を引っばってきた詩人の一人と言えよう。
 吉本隆明はどうなのだろうという疑間が残った。対談の数も多いし取り上げてしかるべきと私は思った。
野沢氏は何か深い理由あって敢えて取り上げなかったのかもしれない。
 二次会にも出た。
大橋政人氏がいつものように元気であった。
問題発言を三つ、四つと。
さすがと思わせる内容のあるものであった。
  ☆
 野沢啓氏は未来社と言う出版社を経営されている。親の跡を継いだのだ。
埴谷雄高のエッセイ、対談集などを刊行している。ほとんどと言っていいのではないか。
私も八割くらいは持っている。
埴谷雄高のエピソードなどを今日の日に、話してくだされば、より会はもりあがったのではないかなどと思った。

(会報292号より)

第29回まほろばポエトリーステージ

 野沢啓講演会「いま、この時代に詩をかくということ」

 

日時 平成27年5月3日(日)午後2時より
場所 榛名まはろば
会費 1500円(1ドリンク付き)
定員 5 0名
予約・申し込み
   電話・FAX 0279-55-0665
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第28回まほろばポエトリーステージ
 木坂涼講演会「詩の食べ方」いろいろ

 

木坂さんが来た日のこと
               金井裕美子

 

 去る五月三日、榛名まほろばでポエトリーステージが開かれた。ゲストは木坂涼さん。
 出迎えを頼まれ、三枝治さんと二人で高崎駅改札口で、木坂さんをお待ちした。ゴールデンウイーク真っ只中。東口付近では、子どもサービスでミニ蒸気機関車を走らせるイベントで賑っていた。もちろん、改札口も人人人の波。電車が到着するたびにザンブと人々の大波がくるので、うまく会えるかしら?と出迎えの二人は緊張し通しだった。無事に木坂さんを発見でき、その笑顔に出会えたときは嬉しかった。そして、一路まほろばへ。
 まほろばポエトリーステージは、ゲストと聴く人たちとの距離が近い。それは大きな魅力だ。“今、この時、この人と同じ場所に居る”その嬉しさを身に感じられるのがいい。
 本日、満席。隣の練習場からサッカー少年たちの歓声が響いてくるのも、薫風が白いカーテンをふわりとゆらすのも、木坂さんのまるみのある声質と飾らない人柄、やわらかな表情や仕草とよく似合って、心地良かった。
 木坂さんは一九五八年生まれ(私より一つ下)。詩集『ツッツッと』で現代詩花椿賞を受賞されている。「詩学」の投稿欄の選者を務めていらしたこともあり、詩人として有名なのはご存知の通り。絵本作家、翻訳家としても人気があって、活躍中。また、〈余白句会〉のマドンナ的存在でもあるとのこと。
 ご自身の生い立ちからはじまり、内気だった少女期のこと、ニューヨークに行った頃のこと、詩作の方法など言葉を選びながらもよどみなく「詩の食べ方」いろいろを語られた。愛らしいゆつたりとした口調で朗読もまじえて。ああ、天性の詩入っているんだなあ、と見惚れながら、あらためて、詩を楽しいと思った。日頃、せわしなく暮らしていてカチンコチンにこっていた心がほぐれた気がした。
 夫アーサー・ビナード氏と共訳のアメリカ子ども詩集『ガラガラヘビの味』(岩波少年文庫)の裏側。よく訳せたと思った文をアーサーさんの部屋へ届けておくと、削られたり加えられたりして戻ってきたなど、共訳ならではの難しさも垣間見られて、面白かった。
 おしまいにエッセイ集『ベランダの博物誌』から、ノーベル賞を受賞したポーランドの詩人、シンボルスカの「詩の好きな人もいる」を朗読。〈(前略)詩が好きと言っても―――/詩とはいったい何だろう/その問いに対して出されてきた/答えはもう一つや二つではない/でもわたしは分からないし、分からないことにつかまっている/分からないことが命綱であるかのように〉
 詩の好きな人は少数派かもしれないが、命綱につかまって、ここ、まほろばで、詩の好きな人たちと共に過ごせた一日を幸いに思う。

(会報288号より)

 

第28回まほろばポエトリーステージ

 木坂涼講演会「詩の食べ方」いろいろ

 

日時 平成26年5月3日(土)午後2時より
場所 榛名まはろば
会費 1500円(1ドリンク付き)
定員 5 0名
予約・申し込み
   電話・FAX 0279-55-0665
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