「裳」―耳で味わう詩―
 相乗り朗読会を終えて    須田芳枝


 詩誌「裳」同人で表紙絵を担当し、版画家としても活躍中である中林三恵さんが「megu/mieそれぞれの翼」展をフリツツ・アートセンター(前橋市敷島町)で開催した。8月1日〜24日までの会期中の各土曜日、イベントを組み、その一環として9日「耳で味わう詩―詩人による自作詩の朗読」会が開かれた。「裳」の同人が主として朗読をするのは初めての試みであった。様々な事情で金井治子。四宮朋・曽根ヨシ・房内はるみ・真下宏子・中林三恵・そして私の七名が参加した。
 また詩人クラブ会員の新井隆人さんの協力を得て、彼が代表を務める文化活動団体「芽部」のお仲間が、朗読の際に楽器演奏を担当してくれるという、驚きのサプライズがあった。単純な私は「一人で舞台に立つより誰かが隣に居てくれた方あがらないかも」と早速ピアノを予約した。各々が自分の作品と相談しながら民族楽器の口琴や、リズム楽器の奏者と事前音合わせ。音合わせとはいっても自作詩にちょっと目を通して貰うだけの、ぶっつけ本番といった一時間半がスタートした。
 中盤ゲストの浅見恵子さんが専属?サックス奏者と共に息の合った朗読の醍醐味を披露。間よく楽器独奏が入り、雰囲気が和むと同時に緊張感もほぐれ、耳慣れない口琴の音色等に聞き入った。いよいよ終盤に入り、司会進行役も担当してくれた新井さんと、奏者が織り成す絶妙な世界へ誘われる。その圧巻のハーモニーにはとうてい及ばないが、初めてとは思えない音と朗読の調の中、夏のタベは滞りなく幕を閉じた。
 今回の朗読会は「裳」の自発的な発案ではなく、中林さん親子の二人展に誘われる形で始まり、その過程で様々な提案に尻込みをせずに参加の手を上げる事で実現した相乗り朗読会ではあった。しかし各自が持ち寄った詩を通して得た経験は会が終った後の、小さなパーティでのそれぞれの顔の輝きを見れば成果があった事は一目瞭然であった。
 詩を書く事は極めて個人的で孤独な作業だけれど詩が特別な訳ではなく他の芸術も同じだと思う。開かれた詩の朗読会という座席に座り、聞き手であり、書き手であり、読み手でありながら詩の窓を少し開かれたものにしてゆく必要性を感じた貴重なひと時であった。

(会報289号より)