その後の「裳」       曽根ヨシ

 

 詩人クラブからの執筆依頼の通信には、「女性ばかりの詩誌「裳」に男性が入会した。その後の詩的状況について書いてください。」とあった。驚いた。詩を書く時に男や女を意識し書くはずがないからだ。詩とは人生を辛抱強く生きる、その自分の中から自然に必然的に出てくる言葉なのだから。まずは入会頂いた二人の紹介を簡単にさせて頂く。この度、裳に入会したのは本間修一さんと、石田洋さんである。二人は同年令で本間さんは東京に生まれ小学校から大学までを東京で過ごし卒業後は新聞記者。地元生まれの石田さんは高校の英語教師でした。二人とも詩のグループには入らず一人で書いていたようである。個性豊かな実に優秀な二人で裳同人は学ぶことが多く作品はレベルアップして来たと自負している。二人が入会してくれたのは裳127号からでまだ三号のみの発刊をみたに過ぎない。しかし二人はその前に上毛詩壇に投稿を始め熱心な投稿者となっていく。石田さんに至っては第一作「秋を刈る」で選者の私も舌を巻いた。うれしかった。その熱心さには頭が下がった。「裳は男は入れないのですか」と聞いてきた。いやそんなきまりはありません。「裳」は私の発案ではなかった。崔華国さんが女だけで同人誌をやってみないかと私をたきつけたので面白そうだと思い乗ったのである。
 何といってもここ二年間であこがれの賞を独占してしまった二人である。同人への入会を打診すると全員大喜びで賛成し元気づいた。二人は「裳」127号から同人となり第一回の合評会では存分に発言してくれた。男性の視点と視野は異なり詩の題材の掴み方が女性よりも広く啓発された。
 「裳」発行の初期に女ばかりでかたまるのはあやういと意見を呈してくれた詩人の方々もいた。「男女の性差を超越して、どちらにも通じる詩の真実をひたすら追求していくのが望ましいのではないか。」お二人も性差を全く意識はしない。共通の基盤の上でお互いが切磋琢磨しお互いの感性を高めていけばそれでよいと考えている。
 結びとして、男性二人が入会しどのような変化があったのか感想を聞き、記しておいた。

1.合評会がにわかに活気を帯びて細部にまで目が届くようになった。
2.女性の遠慮がなくなり意見や感想が出せるようになり思いが伝わってくる。
3.作詩に関してより一層女性特有のこまやかさとしなやかさが出たように思える。
4.何と言ってもよいことは「裳」同人の詩に大きなうねりが出た事である。今後もこの動きを大切にしていき

  たい。

以上の事は男性陣からの感想の一端ですが、貴重な助言となりました。
 これからも皆様の変わらぬご指導ご助言をいただければ幸いです。

(会報297号より)